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猪鹿蝶(いのしかちょう)

最終更新日:

猪鹿蝶(いのしかちょう)は、萩に猪(7月)・紅葉に鹿(10月)・牡丹に蝶(6月)の3枚のタネ札でできるこいこいの役です。3枚そろうと5点で、ほかのタネ札を1枚取るごとに1点ずつ加わります。このゲームでは3枚がタネ(タネ札5枚で1点)にも数えられるので、タネ札が5枚になると両方の役が成立します。

  • 萩に猪(7月・タネ・10点)
    萩に猪はぎにいのしし7月・タネ札・10点
  • 紅葉に鹿(10月・タネ・10点)
    紅葉に鹿もみじにしか10月・タネ札・10点
  • 牡丹に蝶(6月・タネ・10点)
    牡丹に蝶ぼたんにちょう6月・タネ札・10点

猪鹿蝶の3枚

萩に猪・紅葉に鹿・牡丹に蝶は、9枚あるタネ札(ほかの花札の遊びでは10点札)のうちの3枚です。月はばらばらで、どれもその月にただ1枚のタネ札です。

猪鹿蝶の3枚
札月・花絵柄
萩に猪はぎにいのしし7月・萩萩の中を駆ける猪
紅葉に鹿もみじにしか10月・紅葉紅葉の中でそっぽを向く鹿
牡丹に蝶ぼたんにちょう6月・牡丹紅い牡丹に舞う二匹の蝶

残り6枚のタネ札は、梅に鶯・藤に不如帰・菖蒲に八橋・芒に雁・菊に盃・柳に燕です。猪鹿蝶ができていれば、このうち1枚取るごとに猪鹿蝶が1点増えます。

  • 梅に鶯(2月・タネ・10点)
    梅に鶯
  • 藤に不如帰(4月・タネ・10点)
    藤に不如帰
  • 菖蒲に八橋(5月・タネ・10点)
    菖蒲に八橋
  • 芒に雁(8月・タネ・10点)
    芒に雁
  • 菊に盃(9月・タネ・10点)
    菊に盃
  • 柳に燕(11月・タネ・10点)
    柳に燕

点数:このゲームと任天堂ルール

猪鹿蝶の点数は、このゲームも任天堂の役一覧も5点で、ほかのタネ札1枚ごとに+1点です[1]。違うのは「タネ」(タネ札5枚で1点)の扱いです。任天堂の役一覧では、猪鹿蝶ができるとタネは無効になります[1]。このゲームは役をそれぞれ別に数えるので、3枚を含むタネ札5枚では猪鹿蝶とタネの両方が成立します。そこに倍付けの違い(このゲームは8点以上、任天堂は7点以上で2倍)が重なり、タネ札が5枚になったところから点数が分かれます。

タネ札だけで勝負した場合(こいこいなし)。このゲームの得点は部屋の初期設定(8点以上で2倍)によります
取り札このゲーム任天堂のルール
萩に猪・紅葉に鹿・牡丹に蝶猪鹿蝶5点5点猪鹿蝶5点5点
3枚と菊に盃猪鹿蝶6点6点猪鹿蝶6点6点
3枚と梅に鶯・芒に雁猪鹿蝶7点+タネ1点8×2=16点猪鹿蝶7点(タネは数えない)7×2=14点
タネ札9枚猪鹿蝶11点+タネ5点16×2=32点猪鹿蝶11点(タネは数えない)11×2=22点

ほかの役との組み合わせ

猪鹿蝶はほかの役と足し算で、1枚の札を複数の役に数えられます(ほかのルールでの扱い)。いちばん働くのは「菊に盃」です。タネ札なので猪鹿蝶に1点を加え、タネの1枚にもなり、さらに「芒に月」や「桜に幕」と組めば月見で一杯・花見で一杯にもなります。

  • 猪鹿蝶の3枚と「菊に盃」「芒に月」:月見5点+猪鹿蝶6点で、11×2=22点です(月見で一杯)。
  • タネ札9枚すべて:猪鹿蝶11点+タネ5点で、16×2=32点です。任天堂のルールでは11×2=22点です。

猪鹿蝶とこいこい

猪鹿蝶だけなら5点で、2倍にはなりません。その後タネ札を取るたびに合計点が上がり、上がるたびに勝負するか、こいこいするかをもう一度選べます。タネ札があと2枚増えると合計5枚で、猪鹿蝶7点+タネ1点=8点となって2倍になり、こいこいを1回していれば8×2×2=32点です。ただしこいこいの倍率は、その回に勝った側の得点に掛かります。相手が先に役を作って勝負すれば、あなたのこいこいは相手の得点を増やすことになります。

絵柄と名前の由来

「猪鹿蝶」という名前は、3枚に描かれた猪(いのしし)・鹿(しか)・蝶(ちょう)を並べて読んだものです。どの札も、その月の植物に動物を添えた、和歌や絵画でおなじみの取り合わせです。

萩に猪(7月)

萩に猪(7月・タネ・10点)

萩の中を駆ける猪。萩は秋の七草のひとつで、旧暦の7月はすでに初秋です。猪が萩を倒して作る寝床は「臥猪(ふすい)の床」と呼ばれ、『徒然草』第十四段は「恐ろしき猪のししも、臥猪の床といへば、やさしくなりぬ」と記しています。京都のかるた製造元・大石天狗堂によると、猪は武家が信仰した戦の神・摩利支天(まりしてん)の使いとされ、「猪突猛進」の勢いから、武士や勝負事にとって縁起のよい動物とされてきました[7]。

紅葉に鹿(10月)

紅葉に鹿(10月・タネ・10点)

紅葉の中でそっぽを向く鹿。「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき」(百人一首5番、猿丸大夫)のように、紅葉と鹿は古くからの秋の取り合わせです。人を無視する意味の「シカト」は、この鹿がそっぽを向いていることから「鹿十(しかとお)」が語源になったといわれます[6][8](用語集)。

牡丹に蝶(6月)

牡丹に蝶(6月・タネ・10点)

大輪の紅い牡丹に舞う二匹の蝶。牡丹は中国から伝わった「百花の王」で、公家の近衛家の家紋にもなりました[9]。蝶は卵・幼虫・さなぎを経て姿を変えることから再生の象徴とされ、中国語で蝶が八十歳を表す字と同じ音になることから、長寿の吉祥ともされました[10]。

猪鹿蝶を狙うときのコツ

  • 3つの月に注目する。6月・7月・10月に、猪鹿蝶の札が1枚ずつあります。同じ月の札を手札から出すか山札からめくれば、場にあるその札を取れます。
  • 1枚で決まる。相手が3枚のうち1枚でも取れば、あなたはこの回、猪鹿蝶を作れません。相手にとっても同じです。取り札にマウスを重ねるかタップすると、持ち主の進み具合が「猪鹿蝶:2/3」「(もう作れない)」のように表示されます。アシスト表示がオンなら、相手の役を止める取り方には、取る前に「阻止」と表示されます。
  • タネ札はむだにならない。猪鹿蝶ができていれば1枚ごとに1点増え、9枚のうち5枚でタネにもなります。
  • 青短と月が重なる。6月と10月には青短もあり、9月には菊に盃と並んで3枚目の青短があります。青短と同じ月の取り合いになりがちです。
実際に遊んでみる

ローカルルールとほかの遊び方

  • 猪鹿蝶を6点とするルールもあります[5]。
  • ほかのタネ札1枚ごとの+1点は共通のルールではなく、ウィキペディア日本語版でも「種札が1枚増えるごとに1点増しとなるルールもある」という書き方です[2]。古いルールでは+1点がない代わりに、猪鹿蝶とタネを両方数えます[3]。このゲームはその両方を、任天堂は+1点だけを採用しています。
  • 任天堂の1960年代のこいこいの説明書には、猪鹿蝶がありません[3]。
  • 原則として3人で遊ぶ花合わせでは、猪鹿蝶は20点の出来役です。中部地方などには牡丹に蝶の代わりに芒に雁を使う地域があり、東海から関東の一部には、猪・鹿・雁の3枚で作る「嵐」(「野荒らし」から)というローカル役も伝わっています[4]。

このゲームの猪鹿蝶は5点、ほかのタネ札1枚ごとに+1点で、タネも別に数えます。部屋の設定で変えることはできません。ほかの代表的なローカルルールはローカルルールのページで比べています。

よくある質問

猪鹿蝶の3枚はタネにも数えますか?

このゲームでは数えます。ほかのタネ札を2枚取ればタネ札5枚になり、猪鹿蝶と並んでタネ(1点)も成立します。任天堂のルールでは、猪鹿蝶ができるとタネは無効です[1]。タネについてはタネ・タン・カスのページで詳しく解説しています。

菊に盃でも猪鹿蝶に1点加わりますか?

加わります。菊に盃はタネ札なので、ほかのタネ札と同じく1点増えます。任天堂のルールでも同じです。任天堂はさらにカス札としても数えますが、このゲームでは数えません。

参考文献

  1. こいこい|花札の歴史・遊びかた、任天堂、役の点数、猪鹿蝶ができたときのタネの扱い、7点以上の倍付け、こいこいのルール
  2. こいこい、ウィキペディア日本語版、一般的なルール、猪鹿蝶の+1点
  3. Koi-Koi、Fuda Wiki、古いルールの役、任天堂の1960年代の説明書
  4. 花合わせ、ウィキペディア日本語版、花合わせの猪鹿蝶、ローカル役「嵐」
  5. 花札の遊び方(こいこいのルール)、えとはなっ!、猪鹿蝶6点
  6. 花札、ウィキペディア日本語版、紅葉に鹿と「シカト」
  7. 花札の謎シリーズ!7月札『萩に猪』、大石天狗堂(京都のかるた製造元)
  8. 花札の謎シリーズ!10月札『鹿に紅葉』、大石天狗堂
  9. 花札の謎シリーズ!6月札『牡丹に蝶』前篇、大石天狗堂
  10. 花札の謎シリーズ!6月札『牡丹に蝶』後編、大石天狗堂